色彩心理と心理学
色彩心理:色彩が人に与える効果
「アメリカで刑務所の壁をピンクに塗り替えたら、凶暴な囚人が大人しくなった」
「ロンドンの自殺の名所だった黒い橋を明るい緑色に塗り替えたら自殺者が三分の一に減った」という有名な話があります。
色と心は密接な関係があるのです。
アメリカの大統領選挙では、ネクタイの色が赤なのか、青なのか注目されることがありますよね?
これは、色彩が人に与える効果を演出に用いている1つの例です。
何を伝えたいのか話の内容によって、赤と青を使い分けていたりもします
有名なのが、ケネディがニクソンに勝利した大統領選挙の話です。
1960年のテレビ討論会で、ケネディは、紺色のスーツに白いシャツ、赤のネクタイというスタイルで登場しました。
当時のアメリカは、カラーテレビの放送が1954年にはじまったばかりでまだ、白黒テレビの家も多かった時代です。
紺色と白では、明度差があります。
白黒テレビでは、この配色は明度のコントラストが大きく、若々しく、爽やかで、勢いのある印象を与えたのではないかと言われています。
また、ネクタイの赤は、リーダーシップ、行動力、活力、エネルギーを表す色。
それに対して、ニクソンは、ブラウン系のスーツを着用していて白黒のテレビでは、ぼんやりとした印象を与えてしまっていたようです。
実際のそのせいで、ニクソンが敗れたということではないと思いますが、
当時のイメージコンサルタントの間で、色が人に与える影響の大きさを認識し以後、人のイメージ戦略にも、色は欠かせないものとなりました。
カラーコンサルタントの活躍と歴史
- ヨハネス・イッテンがドイツのバウハウスで色彩を教える。著書「色彩論」1919年
- アメリカのロバート・ドアがインテリア業界で「アンダートーン」を発案。1928年
- アメリカのフェイバー・ビレンは、色彩調節や安全色彩を開発。1940年代
- アメリカのチャスキンは、手術室を血液の赤の補色である緑に提案。1940年代
- アメリカで政治家がカラーコンサルタントを雇いイメージ戦略を始める。1960年代
- 日本でも、企業のイメージ戦略にカラーが活用されるようになる。1970年代
色彩学:色の正体
私たちが、無色透明に見えている「光」の中に、色を感じさせる要素があります。
光は、「電磁波」と呼ばれる放射エネルギーの一種です。
電磁波は、波長の長さによって、種類があり、長波長側から、テレビ波・レーダー波、赤外線、紫外線、X線、ガンマ線となりますが赤外線と紫外線の間にある「可視光線」と呼ばれる波長が、
私たち人間に、「色覚」を生じさせます。
つまり、可視光線とは、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の虹の色であり赤外線と紫外線の間にある電磁波ということになります。
ここまでは、物理学の分野のお話になります。
心理学:生理学と投影法
一方、人間がどのようにして色を捉えるのか?
となると、生理学の分野のお話になります。
人間が色を見るためには、光と物体と色覚(色を脳で感じる能力)が必要です。
人間は、物体から反射して来た光が、物体の色として感じるのです。
そして、その色を認識する時、何らかの心理的作用が働くことがあります。
色彩は、基礎心理学の各分野で研究されています。
色彩検定やカラーコーディネーターの試験にも登場する色の対比、色の同化など、色知覚についての研究です。
そして、応用心理学として、産業、環境、文化、芸術など様々な領域で扱われ実際に、建築、環境、マーケティング、商品開発などで活用されています。
また、色彩を使った性格検査(投影法)や、芸術療法、呼吸法やイメージ療法など、心の治療や援助にも使われています。
色を使った投影法
- スイスの精神科医H.ロールシャッハの「ロールシャッハ・テスト」1921年
- イギリスの小児科医M.ローエンフェルト「モザイク・テスト」1929年
- アメリカの心理学者H.A.マレーとC.D.モーガン「TAT(主題統覚検査)」1935年
- スイスの心理学者M.リュッシャー「リュッシャー・カラーテスト」1947年
- スイスのM.フィスター「カラー・ピラミッド・テスト」1950年
- 他に、絵画テストとして、バウムテスト、風景構成法、人物絵画法、動的家族画法、HTPテストなどがある
色が関わる芸術療法
- フィンガーペインティン
- 交互色彩分割法
- スクィッグル法
- MSSM
- 九分割統合絵画
- ぬり絵などがある
※参考書籍:
色彩心理のすべてがわかる本/山脇惠子著(ナツメ社)、好きな色嫌いな色の性格判断テスト/フェイバー・ビレン著・佐藤邦夫訳(青娥書房)